今回は、前回まで、3回シリーズでお伝えしてきた審議会の「傍聴非常事態宣言」の番外編です。4月22日に開催された「平成31年度第1回:社会教育委員の会議」での懸案事項だった「生涯学習センター機能」の一部を現状小金井市公式サイト内で実現する活動の後日談です。具体的に提言の一部がどのように実現されたか(小金井市の公式サイトで実現されたか)をお伝えしようと思います。
結果は、小金井市の公式サイトの「生涯学習」コーナーをご覧いただければ一目瞭然です。「生涯学習情報コーナー」という区分のコーナーが設置され、様々な生涯学習の情報が一覧で見られるページができました。そのことが会議で報告され、委員からは特に問題は指摘されませんでした。「取りあえず、一部でも実現できて良かった」というところでしょうか。実際のコーナーは、こちらをご覧ください。
次に私なりにこの改訂の課題を読み解き、これからの参考にしてもらうためのガイドをしてみます。
公式サイトにある「生涯学習」コーナーを概観する
先ず、生涯学習のコーナーのトップをご覧に入れます。以下の通りです。改善点は、一番下に「生涯学習情報コーナー」が付け加えられています。どう、思われますか?「新たなコーナーができて良かった!」でしょうか?私は、そうは思いません。Web構築の基本は、非常に単純で簡単です。「一目見て、自分の知りたい情報にたどり着く」という構造づくりなのです。
実は審議会でのWeb階層についての論議や項目名段階からの間違いでもありました。今回は、その点をご紹介します。もちろん、指示通りに作ってあるのだから、今更仕方ないという方のためには、実は指示通りにもつくられていないのです。そのチェックもできていないという実態については、次回にご紹介します。今回は、情報提供の仕方の基礎という部分での間違いをご案内してみます。
間違いその1:Webの階層構造づくりの失敗
そうした視点で見た場合に、まず大事なのは、普通の市民がこのコーナーを見て、この新たな「生涯学習情報コーナー」には、「どんな情報が掲載されているか?」や「自分が求めている情報がそこにあるか?」がわかるかということにかかっています。もちろん、「実際にこのコーナーにアクセスして、内容をみればわかる」とおっしゃる方がおられるかもしれませんが、それでは駄目なのです。そうした気持ちで以下の項目をご覧ください。
一般の方の心理をご紹介しましょう。まず、一番新しい情報は、どこを見れば良いのかという心理です。どれ、どの項目だと初めてこのコーナーをご覧の方は想像されると思いますか?
一つの回答は、「一番上の項目」です。もう一つの回答は、「お知らせ」(ニュースというその鮮度を示した項目としての理解)です。その次は、「名詞でなく、何々しました。何々しています。」という時間的な表現のある項目です。
もう、お解りですね。一番上の「市政施行60周年記念講演会「古地図でたどる小金井の幕末明治」を開催しました」、もしくは、三番目の「お知らせ」という項目が新しい情報だと感じるのです。間違っても、一番下の「生涯学習情報コーナー」ではありません。それでも、一番下に最新の情報があり、どうしたらこの情報が新しいかを伝えられるかという場合は、各項目に最新情報の更新日時を表示する方法があります。具体的には、「生涯学習情報コーナー:2019年5月1日更新!」などという表示方法です。どうしても新しい情報があるのは、ここですという場合のみ有効です。
新しい情報を求める方のみ有効ですが、ある種の情報をその内容から、探している方には効果がありません。そうした方の場合は、その項目名を工夫するしかありません。「お知らせ」と書いてあれば、最新の情報。「事業案内」と書いてあれば、「どんな事業があるのかを知りたい」という要望に答えてくれるなどと理解されるということになります。その視点で見た場合は、どうでしょう?
間違いその2:項目名と階層に求める内容の食い違い
「生涯学習情報コーナー」という項目名から、このコーナーがどんな情報を提供してくれるか?想像がつきますか?「生涯学習に関する様々な情報を知らせてくれる項目」と理解されるでしょうか?残念ながら、そうはいきません。何故なら、この階層が「生涯学習」という項目のトップだからです。既にこのコーナーを選んだ方は、この階層に「生涯学習に関する情報」を求めて入ってこられているからです。このコーナーを見たときには、その中の詳細な区分に関心が向くのです。「生涯学習の中の、**という情報を知りたい」というわけです。
結論は、以下の通りです。
こうした情報を求めてアクセスする一般の方の視点で見ると「文化財事業」「お知らせ」「事業案内」「資料」「講座」「推進計画」(一番上と下から二番目は、具体的な情報になっていますので、この内容を求めていない方は選びません)という項目名を見て、自分が求める内容に該当する項目を選ぶ筈です。そして、それ以外の内容を求める方が「生涯学習情報コーナー」を選ぶようになります。残念ながら、このコーナーを設計した審議会では、このコーナーにそうした情報を掲載したわけでないことは、以下の計画案<前回ご紹介した設計案>から明らかです。この時の案では、「生涯学習情報コーナー」というものは、「生涯学習」のトップのコーナーという意味だったのです。その中のコーナーでは、意味をなさないものでした。では、どうしたら良かったのか?
実は原因は簡単に想像がつきます。現状の「生涯学習」トップの下にある「事業案内」の中の「文化財事業」(市史編さん事業なども)や「お知らせ」などの情報が網羅できないと考え、さらに「いままで作ったページをできるだけ変えずに新たに付け加えるだけにしたい」「面倒な既存ページやコーナーの改訂作業をせずに済ませたい」という思惑が働いたことが見えてきます。そのための失敗が主な原因でしょう。中途半端な区分けや情報の重なりが生じたのは、「見やすさ」「便利さ」を「面倒くささ」を理由に犠牲にしたという結果であることは容易に想像がつきます。
いうなれば、今まできちんとそのコーナー(生涯学習)の構造をきちんと考え、構築してこなかったツケが廻ってきたようなものです。取り急ぎ必要な内容をこちらやあちらに増築して、継ぎ足し、いびつになった建物に審議会からの余計な提案で次の増築をしなければならなくなり、「えい、いいや、ここにくっつけとけ!」といったようなレベルでの職人仕事のようなものです。情報を得たくて、このいびつな建物を徘徊する市民にとってはたまりません。なにがどこにあって、どれが必要な情報か?迷路のようになるわけです。実は、行政改革での事務改善でこの問題は解決しません。情報システムにあったHPの管理権限が秘書課に移っても悪くなることこそあれ、良くはなりません。先ず大事なのは、業務に対する意識改革なのです。「市民への情報サービスとしての広報」という視点にたって、自分たちの仕事しやすさという次元を捨てて、各部門のセクショナリズムを越えて、連携し、「より良い市民サービスへの体制づくり」というビジョンを基盤に取り組まないとできない作業なのです。
この実際のWebを見て、これでは駄目だと思わなければ、そのままです。残念ながら、このコーナーができましたと提示されて、疑問に思った審議会の委員の方はおられません。何故でしょう?私が聞きたいのもそのところなのです。
次回は、この生涯学習のトップからアクセスできる各コーナーの課題も含め、さらに大きな課題をご紹介していきます。乞うご期待!!
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